
環境学博士に聞く地球温暖化の話 Vol.2 〜後編〜


そろそろ、、、、入りますか!
本題!

はい!
早速ですが。
何か、「一目瞭然」的な証拠ありますか?

ないっす!

がーーーーん。
無いんですか、、、、。
知り合いのドクターも言っていました。
どんなことも100%ということはないので、どうしても専門家の意見は(一般生活者にとって)分かりやすさや、インパクトに欠けてしまう。
逆を言うと単純なデータで「こうだ!」と断言しているものには気をつけたほうがいいと。

この「人為起源CO2温暖化説は「正しい」か?」という記事を読んでもらうのがいいですが、ちょっと難しいですかね?

、、、(読んでる)、、、、。
うーーーーん。
「理解した〜!!」とは ならないです。

ちょっと難しいですね。
では、頑張って僕なりに説明します。

お願いします!

この対談企画の「序章」の部分で、南極で石取ってきた話したじゃないですか。
覚えてます?

はい!
覚えてます。

僕らが行った場所って、南極の沿岸からだいたい100kmくらいのところで、

うんうん。

そこでいろんな高さの山に登って、 その山がいつから「日焼け」してたかってのの証拠を持ち帰るために石をとってきてたのですが。

はいはい。

それでわかるのって、「南極のその場所が」いつ氷から顔だしたか、ってことなわけで、

うんうん。

その場所の、それを調べるだけでは南極以外の地球全体に何が起こったか、は分からんワケです。

ほぅ。

だから僕たちには仲間が必要だ!

ほう!

山のところでテント貼ってるのが僕がいたチーム。
で、右のほうに人がいるでしょ?「アイスコア」って書いてあるところ。
それが仲間。

彼(水色)ですね?

そう!
南極の内陸の方って、厚いところでは5000mもの厚みの氷があるんですけど、その氷ってどこから来たか。

え。
どこから来たの?

もともとは雪なんです。

へー!

海が蒸発して、雲になって流れてきてここに降る。
寒いから絶対溶けない。

へーーーー!

雪って❄︎(結晶)じゃないですか。

はい。

降り積もるときって、ふわっ♡と積もる。

うんうん。

積もるとき、間に空気を閉じ込めながら積もる。
積もれば積もるほど、昔の空気が閉じ込められて、、、

ほぅ。

重なっていく。

えーーーー!
重くなるんだ!

「重(かさ)なって」ゆく!
関西弁ちゃうで。
※注:このインタビューは対面ではなくチャットで行なっています。

がーーーん。漢字www
「かさなって」いく。
、、、知性が、、、笑

溢れ出しすぎ!

笑。
で?で?

重なってるから、掘れば掘るほど昔の空気を取り出せる、ということで!

おーーーーーーー!

掘り出してきた円柱状の氷(アイスコアっていいます)がここ(国立極地研究所・アイスコア研究センター)に保管してあるんです(僕は2013年までこの研究所におりました)。
その長さ、なんと3000m!

ロマン~!
3000mって何年分ですか?

約80万年です!

おおおおおおおおおおおおお!

掘り出してきたチームが題材になってるのが、、、、
映画「南極料理人」!

おーーーーー!

掘り出してきた氷を溶かして分析すると、何年前の空気中の二酸化炭素が、どのくらいの濃度だったのか、ってのが分かる。

ねぇ、
ひさしさんも南極でこんなご馳走食べてたの?

いえ。
僕らのチームの南極料理人は、、、
僕でした、、、。

あ。
笑

とはいえ、料理人の方が料理してくれたものをそのままフリーズドライにして(極食)いて、めちゃ美味なんですよ!これが。

へーーーー!すごい!
一個だけ!一個だけ質問いいですか?
大きく脱線しないように、深掘りしないから。

え?
どうぞ!

料理。つまり、口に「入れる」ものはフリーズドライのおいしいもの。
で、「出る」方は?
つまり、、、、う○ことか。
置いてくる?南極に。



笑w
いくら僕でもうんこの写真は送らない。

ちゃんと持ち帰るんですね!

永遠に残りますからね、、、
カッチカチになって。
ほっかほかが、カッチカチに。

何百年後とかに 変な発見のされ方したら歴史が曲がりますもんね。

まぁ、食べたものでバレますよね。

あら。そうなの?
ん?なんの話だったっけ。

うんこです。

笑

あーーー。仲間の話だ。

空気!

そう!
自分たちが調べられるのは、南極のあのエリアの氷の厚い薄いの歴史。

うんうん。

仲間たちが、氷を掘り出して、昔の空気を分析する。
アイスコアチームと合わせても、これだと南極の陸上の話しか分からない。

!

地球は広いので、南極だけ調べても、、、。

確かに。

なので、周りの海も調べよう!

うみ!


おおおおおおお!


おおおおおおおおお!

海底から泥をとってくるんです。

え?
なんで?

プランクトンっているじゃないですか。

それも積もる?

そう!
あったかい海が好きなプランクトンと、
冷たい海が好きなプランクトンと、

、、、プランクトンが
、、、積もる、、、
(理解していない)

そう。
地球が暖かくなったり寒くなったりすると、

なんかよく分かんないけど面白い!(けど、ピンときてない)

じゃぁ、魚でもいいや。
鹿児島の海にシャケとかホッケいないでしょ?

はい(実はスキューバのライセンス持っています)。

(華麗にスルーします)
でも、もし鹿児島の海がめっちゃ寒くなったらシャケやホッケも獲れるようになるかもしれない。

たしかに。

逆に、温暖化したら、北のほうにも亀岡さん行けるようになるし、熱帯魚が東北沖とかにも行けるようになる。

ほぅ!!

そいつら、死んだら海底に沈みますよね。

おおおおお!

積もる。

積もる!
プランクトンが積もる!(イメージできた)

そう!
寒いのが好きなやつか、あったかいのが好きなやつか。
そいつらが順番に地層になって積もっていく。

すごい!

上から順に一枚ずつ見てゆくと、、、
ーー
暑い
寒い
暑い
寒い
ーー
みたいな変化が分かる。

うんうん!

これを世界中の海でやると、、、!

えーーーーーーー!
やるの?!

やってきた(国際深海科学掘削計画 IODP)んです!
1960年代くらいから、地道にやってきてるんです…すごいっしょ!

おおおおおおおおおお!
科学者!
めっちゃ根性ありますね!尊敬!

日本には「地球深部探査船ちきゅう」というすごい船があって、

山﨑晋作さん提供
こないだ竹島沖にも来てたんですが、こんな感じの船が世界中を巡って掘って、そういう調査をやってきてるんです。
ちなみに右手前のが我らがフェリーみしま。

へぇえええ!

そうやって、何百万年、何千万年という世界中の海の歴史が少しずつ紐解かれてきていて。

うんうん。

あと、サンゴとかも。

サンゴの歴史が紐解かれてきてる?
それとも、サンゴを調査することで海の歴史が紐解かれてきてる?


へ〜!


はい。

寒いとき、氷が増えて海が低くなる。

うんうん。

サンゴ礁つくるサンゴって、水面にいますよね。

はい。(←と答えたものの、実はサンゴとサンゴ礁がそれぞれ別のものだと言うことを、インタビュー後に自分で検索して初めて知った)

あれ、光を必要とするからなんですが、寒くて海が低くなったときにも、もちろんその時の水面にいる。
で、あったかくなって氷がとけて、海が上がってくるにつれてサンゴももちろん上に成長するわけです。「光うめー」って。

ほぅ。

てなわけで、当時のサンゴがいるところが当時の水面の高さということだし、
サンゴも魚もプランクトンも、海水の成分をとりこんで自分の体をつくるので、彼らの体の成分を調べると、当時の海の成分が想像できる。

へーーーーーー!

いまでは水没して深い海にいる昔のサンゴたちからも、昔の海のことがわかるわけです。

すごい!

とまあ、氷だの、石だの、サンゴだの、プランクトンだの… あらゆる手段を使って昔の気候、環境がどうだったかってのを調べてきたんです。
とても僕たちだけじゃできない。

もう、、、本当にありがとうございます。

やあ、礼には…(もういい

笑

木の年輪を一枚ずつ数えて、、なんてのもありますし。
本当に果てしない。

(遠い目)。
で、その結果何か分かったんですか?

てなわけで、気が狂うくらいの果てしない作業を世界中の研究者や学生たちが、ときに命がけでやってきて

うんうん。

みんなの力で、地球の気候の仕組みが、かなり分かってきた!

!!!!!(嬉)

それは、一言で言うと
「めっちゃ複雑」。

そうだよね。

気温が上がる、という一つの現象から、雨が増えたり、ある場所では減ったり、雲が増えて気温下がる方向になったり、植物が増えて二酸化炭素吸収したり、ある場所では氷がとけて湖ができて…とかみたいにとにかくいろんなことがあちこちで変化して。

無数の「風が吹けば桶屋が、、、」的な要素が複雑に絡み合ってるわけですね。

そうなんです。
てな感じなんだけど、その、お互いの間の相互作用がだいぶ理解できてきて、スーパーコンピューターでシミュレーションできるようになってきてるんです。

ほぅ。

一方で、150年以上前から、気温を計測して記録するようになってきてるから、この150年間くらいは気温の変化がどうだったかを知ってる。

ほーーーーー! 冒頭で教えてもらったリンクの「コンピュータで計算した」という部分に対する私の中での信頼度。やっと上がりました!!
それらの、あらゆる角度から科学者たちが集めた信頼できる莫大なデータが計算のもとになってるわけか。

はい。
なので、コンピューターによるシミュレーションで、この150年間の気温の変化を再現できるかってのを試して、実際のデータと照らし合わせて答え合わせすれば、自分たちの地球の気候変動の仕組みの理解度を試せるわけです。

おーーーー!

その理解度が、だいたいいい感じになってきてると。
一方で、人間がこれまでどのくらい二酸化炭素を出したのか(the keeling curve)ってのもずーっと計測されてきてる。
どのくらい化石燃料を燃やしたかも、お金に変わってるわけだしもちろん記録に残ってる。

すごい!

ここまでの説明のあれこれをまとめると、
「世界中の研究者たちががんばって、数千万年、数億年という長い時間スケールでの気候変動の仕組みを調べてきた。おかげでその仕組みがけっこうわかってきて、いい精度でシミュレーションできるようになってきた。」
ということです。
その上で、「人間が出した二酸化炭素がなければ、いまの温暖化はまず説明できない」というのが、圧倒的主流の意見で、さっきの記事が言ってることです。

理解しました。

で、今の二酸化炭素の量がいかに異常かってことがわかるのが Keeling curve。これ、ハワイのマウナロア山頂で1957年からずーっと観測され続けてきているデータです。Keelingってのは観測を始めた研究者の名前。せっかくなので一緒に見てみましょうか。

ぜひ!

まず、直近1週間の推移。

ずっと一定じゃないんですね。

はい。次に1ヶ月。
12/12から12/22まで、欠測してますね。機械トラブルか何かかな?
ちなみに1964年にも3か月だけ欠測があって、それは研究費が途絶えてプロジェクトが一時的に頓挫してた期間らしいです。

へ〜!そうなんですね!
月で見ると、データはほぼ横ばいですね。

直近6ヶ月。

下がることもあるんだ。

一年。

平均すると横ばいな感じ?

二年。

あ、、、。
ちょっと右肩上がりな感じ、、、。

これまでの記録全部。

!!!!!!!!!!!

10,000年。
1958年以前の数値は、アイスコアのデータです。

!!!!!
ここ!!!!(汗)

80万年。

!!!!!!!!
、、、、、。

まぁ、自然な変動もあるわけなんですが。
これだけ長期的なデータでみた時、今の二酸化炭素の濃度って本当に自然って言える?マジで??て話です。
この動画、短いので見てください。

そっか。一年の中で大気中のCO2の量が一度減るのは、春夏で植物が頑張ってくれるからなんだ!
でも、その頑張りよりも人間の出すCO2の量の方が多いからどんどん右肩上がりになっている。

そうです。
産業革命と、第二次世界大戦。
石炭を使い始めた頃からどんどんカーブの角度が上がっていっている感じ。

ここまで深刻だとは思っていませんでした、、、、。
「待ったなし」の時期を、もうとっくに過ぎている感じですね、、、。
でも、なぜ大気中のCO2が増えるとよくないのか、また、CO2だけ見てたらいいのか。
そういうことも知りたいです。

ですね。
では次回は、その辺を詳しくやりましょうか。

はい!私ももっと勉強しておきます。

では!

はい!
ありがとうございました!
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ひさしさんとのインタビューシリーズ
・序章:ひさしさんってどんな人?
・Vol.1:本当に温暖化って起こっているの?
・Vol.2・前編:気候変動だけじゃない!ひさしさんが保護したウミガメの話
・Vol.2・後編:気候変動に関するデータは科学者たちの涙ぐましい努力の結晶(このページ)
・Vol.3・前編:もう引き返せないかもしれない?ポイントオブノーリターン
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