
大阪にあるジャックさんのお店Django(ジャンゴ)はこんな感じのステキなお店。私が今まで食べた中で一番おいしい野菜はジャックさんの野菜です。
この日は、ジャンゴナイト鹿児島というイベントの食材の買い出しのために、ジャックさんと長島町のだんだん市場へ。
その車内でいろんなことを話しました。

ねぇ、ジャックさん。
どうしてジャンゴやろうと思ったの?

ジャンゴって店を始めた理由の一つに、「20代30代の人から見てかっこいい大人にならないといけない」っていうのがあって。
それがどっからきたかというと、自分たちが大学生の頃とか20代前半の頃とかは、遊び始めてお酒も飲み始めて、いろいろ教えてくれてた人が40代くらいの、めちゃくちゃかっこい大人の人がいっぱいいて。

うんうん。いたね。

「かっこいいなー、こんな遊び方するんやー!」とか。仕事もバリバリやって、夜もしっかり遊んで。「めっちゃかっこいいなぁ、早くそんな大人になりたいなぁ」って思っててん。

うんうん。

で、自分たちが40代になりました。見渡してみてどうなんって思った時に、かっこいい大人が少ないよなって。

そうだよね。

うん。かっこいい大人が少ないから、若い人たちも希望が持てなくて、お先真っ暗みたいな。時代もちょっとあるんかもしらんけど、気持ち的に元気なおっさんがおれへん。だから、自分がそこのポジションをやろうと思って。ちゃんと仕事も一生懸命やって、自分の好きな事も一生懸命やって、飲食ってめっちゃいいよなって思ってもらいたくて。

ジャックさん、そのことずっとブレずに言ってるよね。

飲食って勉強できへん人がやりますとか、サラリーマン勤まらない人がやりますとかが一般的なイメージなんやな。どうしても。

そう?

せやねん。
そういうネガティブな、劣等生が働く業界みたいな一般的なイメージがどうしてもあって、それを覆したくて。

はい。

もう極端な話すると、自分優秀やねんから自分で店やったらいいやん、とか。お前優秀やねんからサービス業やったらええやん、とか。

本来そうだよね。すごくいろんな力が必要だもんね。自分で店をやっていくって。

うん。一つの企業を経営するのと一緒やもんな。メニュー開発もせなあかんし、製造もせなあかんし、広告宣伝もせなあかんし、営業もせなあかんし、労務管理もせなあかんし。

しかも食材の味も、種類も毎日違うからね。ライブじゃん?結局。

うん。それにするためにはどうすればいいんやろと思って。結局、好きなことやりながら事業として成り立たせるのがゴールなんやろなーって思って。それをやろうって。

うん。

ちゃんと好きなことやりながら、毎日楽しく働きながら、ちゃんと家族も養ってますっていうモデルがちゃんとあれば、みんなそこをめがけて来てくれるんちゃうかなーって。

めっちゃ共感する。
私、全然保育業界なんかやったこともないのに保育園作ったんだけど、保育士は給料が安いしきつい、こういう業界だからしょうがないって、ワクワクなんてできませんって感じって意外とあるのよ。
業界のトップとかも今後保育士は増えるとは思えないなんて言っちゃってる人いて。
そんなぁ、子どもたちといるんだからワクワクしようよって言いたいんだけど、それは理想論ですっていう風潮が世の中にやっぱりあってね。

うんうん。

だから私たちはご近所の、これまで普通に生きてきた人たちが集まって作った、何も特別なものない園だけど、自分たちも毎日こんなに楽しくて、園児たちもこんなに育ってますよ、っていう生きた証拠を。うちはできるよ。だからみんなもできるよ、っていうのを発信し続けたいなって。

うん。

そのために、チーム全員が、自分の人生を他人任せにせずに自分の頭で「考える」組織でありたいと思ってる。

「考える」なぁ。
ジャンゴってな、毎日毎日同じルーティーンで仕事をしてる人には刺激が強すぎる店やと思うんやんか。

ジャンゴが?

そう。例えば、メニューみて頼みましょうって時から、メニューがあってないようなもんやから。(苦笑)
もう「はぁ?」っていう感じ。ちゃんと、メニューがあって、その中から選びますっていうのに完全に慣れ切ってて。

うんうん。
今日どんなおなか?って聞くもんね。ジャックさん。

「飲みに行こうよー」って同僚と飲みに行く時も、何が食べたい何が飲みたいとかじゃなくて、いつもの店で、いつものものを頼んで、いつもと同じお酒を飲んで、いつもと同じような会話で愚痴を言って、みたいなのがけっこう多い。
「今日何が食べたいですか?」って問いかけた時に、「え!?何が食べたいんやろう??」って人がけっこう多くて。

ほー。

そうなんや。それが凄く多くて。これが食べたいとか、これが飲みたいとか、あーしたい、こーしたいっていうのんを心の中に持ってる人が少ない。

そうなんだ!意外!!そうなんだね。

せやねん。毎日同じ仕事をルーティーンでやってる人にけっこう多いんやけど、自分でこーしたいあーしたいとか、イマジネーションもってる割合が少ない。

んー。そこからかぁ。

そう。与えられたものをこなします。出てきたものを食べます。っていう感じが多いねん。だから、ジャンゴみたいに「今日はどんな口ですかー?」とか「おなか減ってますかー?減ってませんかー?」「肉ですか?野菜ですか?」とか言って何食べたいですかってヒアリングから入られると、バチっとハマる人はハマるけど、そうじゃない人も多い。

いるんだねー!?

そう。考えるのが邪魔臭い。それやったら、もう写真付きでリストがあって、その中から選びますっていうのが気楽でいいわーって。

それ働く人にも言えそうだよね。
レシピ用意して分量までしっかり書いていてください、毎日同じものだったら作ります。でも即興でいろんなこと要求されると「そんな事言われても!?」みたいな人の方が多いだろうね。

うんうん。「こうしたいー」とか「こんな風に生きていきたいー」とか言ったら大げさやけど、「明日は何しようかな?」とか「来月こんなんしたいなー」とか考えてる人がけっこう少ない。

そっか〜。でも、これからそういう考えなくていい仕事はどんどんロボットがやってくれるようになるよね。

このあいだね、私が経営しているそらのまちほいくえんの運動会があったんだけどね、それがすごく素晴らしくて。

ほぅ。どんな?

3歳4歳5歳がね、年齢縦割りの合同クラスなの。

うんうん。

他の競技ももちろんそうなんだけど「かけっこ」って、体の発育が全然違うから、普通にやったら3歳が5歳に勝てないのよ。

うんうん。

それをね、保育士が、子どもたちはこれをどう解決するだろうかと、根気強く寄り添って考えさせたの。

へー!

そしたらね、最後、ゴールテープ直前で全員がギリギリのラインで競り合うように、自分たちでハンデをきめ出してね。

ほえー!凄い!!

すごいよね。
みんな一番になりたいし、それなら一番になれる可能性があるから、ハンデ決めるのも真剣で。
何度もなんども走ってみて、(ハンデの距離を)もちょっと長くとか、もちょっと短くとか。
それで、結果的に「全員違う位置からスタートして、全力で走ってゴール側でみんなが競る!」というかけっこを作り出したの。

んんんーーー!!!

そらのまちほいくえんは、働く大人の姿を子どもたちの日常の中に自然に溶け込ませたくて。
それであんな商店街のど真ん中に作ったの。

うんうん!

園児たちは毎日歩いて天文館(鹿児島の繁華街)を登園するんだけど、例えば開店前にお店の前をピカピカに掃除してるおじさんとか、人をよろこばせるために街角でイベントやってる方々とか、ワクワクした顔でそらのまちほいくえんに来てワークショップしてくれる大人とか。
そんな人たちの姿を毎日みてるの。

うんうん。

テレビのなかでライトを浴びてる大人だけじゃなくて、そういう普通の大人たちが、毎日掃除をしていたり、人に頭を下げていたり、大笑いしたり、嬉しくて泣いたり。
そんな姿を日常的にみたことがあるのとないのとでは、踏ん張る力みたいなのも違ってくる気がしてて。
1時間働いたんだから規定通り時給くださいよ、みたいな。そういう話じゃない部分があるよってことを感じてほしいなと思ってて。

うんうん。そうやんね。今の社会は隔離されてる部分が多い。

うん。結局それも大人が作った社会だからね。

心の中になんとなく持ってるモヤみたいな感じで、それぞれの心の中をボンヤリ広がっていく瞬間っていうのをなくして、バーンってきれいな心になってもらうために、自分は何ができるか。そのためには自分がまず不信感を払拭して、自分の未来に対する不信感であったりとか、人に対する不信感であったりとか、世の中に対する不信感であったりとか、今の自分をとりまく環境に対する不信感、仲間への不信感、家族への不信感、あらゆるものに対する不信感をとっぱらっていきたいなーって。

うんうん。

みんなこう信じることができてないっていうか。自分の人生も信じれてないし、自分の未来も信じれてないし、いろんなものを信じれてない。信じてない気持ちが多いから。ちゃんと大丈夫とか、いけるとか、任しとけとか、何とかなるよとか、っていう確信なのかわからへんけど、ちゃんと大丈夫。疑わないっていうか。

うん。いいねー。かっこいいね!それってすごく大事なんだよなー。出てくるアウトプットの質も違ってくるし。もしかしたら自分が損するんじゃないかっていう気持ちでブレーキ踏みながらやるのと、完全に信じ切ってアクセルベタ踏みで能天気にやるのとでは全然違うし。結局、人との仕事って掛け算だから、一人そういう感じになっちゃうと、やっぱり次からはみんなブレーキに足乗せた形でやろうかって感じになるし、楽しくなくなっちゃうよね。

うん。楽しくなくなるよね。

この間保育園でも職員同士のコミュニケーションが足りないなって話になったらしくて、3つある保育園から各2名ずつ集まって研修をしたんだけど、そこで出た話がコミュニケーションをもっと取らないとねっていうことだったんだけど。

うん。

確かにコミュニケーションってとっても大事なんだけど、例えば、私と、ひより保育園の園長の白水純平君って月に数回しか会わないし、会った時もちょこっとしか話さないんだけど、「私と純平の中でコミュニケーションが足りないって思ったことある?」って聞いたら「ない」って言うの。

うん。

ジャックさんとも年に数回しか会わないじゃん。でも、(コミュニケーション)足りるじゃん。足りてるじゃん。

うん。足りてる。

逆に、毎日顔を合わせてる人でも、「足りない」と思う人っていて。
何が足りないんだろうって考えた時に、やっぱりそこの不信感の部分だよねって。
自分は何を目指してるかとか、何を大事にしてるかとか、相手が何を大事にしてるかを知ってるかとか。
大丈夫だよっていうところの気持ちのベースの部分での信頼みたいなものがまだ完全にでききってないから、どんだけ時間かけて、1年一緒にいてもコミュニケーションが足りないって感じるだろうし。

うんうん。

不信感をとっぱらう。どうやったらできる?

なんやろね。別に裏切られてもいいやんっていう感じやろね。

!!
そうだね。

やってみて、思ってたのと違う感じだったとしてもいいよ、っていう自分の中の気持ち。
相手に求めるんじゃなくて。相手にどうしてほしいっていう物差しじゃなくて。相手に裏切られるというのとはちょっと違うかもしれんけど、自分が思ってたのと、望んでいたのと違うリアクションであったとしても別にいいよ、っていう感じやねん、多分。自分の中の気持ちの問題で、相手がどうこうではなくて。

私もよく言うのが、人が何かをしてくれるだろうとか、人が自分の都合のいいように変わるだろうって思ってるから、腹が立ったり凹んだりするけど。もう「人は人」っていう風に思ってたら、天気と一緒で台風来たから腹が立つとか、雨が降ったから裏切られたとか、言わんじゃん、空に。

コントロールできひんもんね。

そうそう。同時に、外からの評価、人からの評価を、常にいい評価を浴びたいと思いすぎてる部分があるよね。感じ方なんてそれぞれで、みんなから好かれなくていいんだけどさ。周りがどう評価するのかってことを。

そう。大人になれば、こうあるべきとか、こうでしょってみたいになっていくやん。自分の枠が出来て、自分のルールが出来て。そっから外れたものに触れあった時に、自分の枠が広がったりとか、ちょっと楽になったりとか、勇気が出たりとかするやん。

うん。

ジャンゴでは「お客様の心と体を元気にする」っていうのがミッションやねん。身体を元気にっていうのは食材にこだわって手作りでっていう形で元気にする。じゃあ、心を元気にするっていうのはどうやるのってなるやん。

うん。

お客様の心を元気にするっていうのは自分の中でイメージがあって、あんなちっちゃい10坪くらいの店で、ソファーも作ったん?とか食器も作ったん?とかグラスも作ったん?とか、ジャズバーとかじゃないのに料理作りながらレコード裏返してとか、料理作りながらお客さんとカウンターで飲みながら仕事してるとか、椅子ないのにお客さんが勝手にカウンターで立ってご飯食べてるとか。「こんなん初めてです!」っていうのがけっこうあるんやね。

うんうん。あはは。

その時にお客さんの頭のてっぺんから花がニョキニョキって生えてきて、花がパーンって開くような、ハナカッパみたいな。そんなイメージなんや。

うんうん。

「えー!そうなん!!」っていう感覚を持った時に人の心って元気になるっていう感じ。今まで「こうでしょっ!」ていう自分の枠があって、当たり前とか常識が、枠がパッカーンって外れて取れて、すごい自由なもっと広い世界があるんやでって気持ちになった時に、気持ちが自由闊達になって、自分を許せたりとか、人を許せたりとか、自分と違う人を好きになったりとか、閉塞感がパーンって打破されるっていうイメージやねん。心を元気にするっていうのは。何の話やったっけ?

不信感をとっぱらう!

そうそうそう、そう。そういうのんで人が自分と話をしたりとか、自分がやってるのを見た時に、そういうのでもいいんやーっていう。飲食店ってこうよねとか、料理作る人ってこうよね、とかじゃなくって。料理作る人でもお客さんともっと話して、お店作って、レコード流してとか。あ、その人がやりたいからやっていいんよね!っていう。それで相手の人が気持ちがちょっと楽になってくれたら嬉しいかなって思う。

いいねー。

おいしいものを作るっていうのは、相手への愛やんか?

うん!

お母さんが子どもに料理作る時に美味しいものをみたいな。

いい表現!

だから美味しい料理を作ろうと努力してる人は、もう他のことも頑張れてると思うねん。ただ、それだけで。

うん!

料理はおいしい料理を。他の仕事やったらこういうことをしようよっていう、仕事によって変わると思うけど。でもスタンスは、相手への愛。相手への愛が強い人は何をやってもうまくいくと思う。
編集こぼれ話

おたのしみに〜
ジャックさんがやってくれる「出張ジャンゴ」。
ジャックさんが、ジャンゴを飛び出して日本全国いろんなキッチンに来てくれる。
現地の食材を使って、現地の若い料理人たちと一緒に、丁寧に丁寧に食に対する思いを話しながらその日限りの「ジャンゴ」を作り上げてくれます。
出張ジャンゴに興味のある方は、ジャックさんにお問い合わせください〜