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「おいしいものを作ろう」というお話(後編)

インタビュー
「おいしいものを作ろう」というお話(後編)
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interviewee Jackさん Djangoオーナー

「おいしいものを作ろう」というお話(前編)では、

”だから美味しい料理を作ろうと努力してる人は、もう他のことも頑張れてると思うねん”という、ジャックさんの素敵な言葉がとても印象的でした。

さてさて、後編ではどんなお話が聞けるのでしょうか?

(前回のおさらい)


美味しいものを作るっていうのは、相手への愛やんか?

ふるかわ りさ

うん。

だから美味しい料理を作ろうと努力してる人は、もう他のことも頑張れてると思うねん。ただ、それだけで。

ふるかわ りさ

うん!

料理はおいしい料理を。他の仕事やったらこういうことをしようよっていう、仕事によって変わると思うけど。でもスタンスは、相手への愛。相手への愛が強い人は何をやってもうまくいくと思う。

ふるかわ りさ

うん!

例えば、レストランで働いてて、おいしい料理を作って「おいしい!おいしい!」って言ってもらおうと思って頑張ってる人は、たぶん、接客ももっと喜んでもらうためにどうしたらいいやろうとか、レイアウトはどうしたらいいやろうとか、相手に喜んでもらうためにいろいろ工夫するやんか。

ふるかわ りさ

うん。

でもスタートのところで、食べ物屋さんやのに、美味しいものを出そうっていう努力が出来へん人は、何に対しても中途半端というか頑張れてないというか。

ふるかわ りさ

うん!そうかー。腑に落ちるね。相手への愛かぁ。

相手への愛。お母さんが子どもに料理を作るように。

ふるかわ りさ

そこに「不信感」は無いねぇ(「不信感」について詳しくは前編で)。相手への愛がスタートだったらね。

うん。今日もインスタントラーメンねーとか、惣菜屋さんで買ってきたものをパックのまま出すとかっていうのはね、一事が万事というか。

ふるかわ りさ

うん。ためになる!講演に来てほしい!(笑)

なる?話しますかね(笑)

ふるかわ りさ

うん!

若い結婚もしてない人やったら、エピソード的なものも限られてくるし、子どもに対してっていう話をしてもなかなかピンとけーへんかったりするかもしれん。相手を大切にする人って、子どもの頃からたぶんそうやろうし。仕事やからこうしなさいとか、言われたことはお金のためにやりますっていう人やと、横にも広がらへんし。

ふるかわ りさ

うんうん。

僕はサービス業やから、人を見る時は相手に喜んでもらいたいっていうホスピタリティがベースにあって、技術とかノウハウとかは何とでもなるやんか、トレーニングで。でも、そこのホスピタリティっていうところはトレーニングしにくい部分があるから。

ふるかわ りさ

そうだね。本来、人って人に喜んでもらえて自分の存在価値みたいなものを感じるから、人に喜んでもらえることをするっていうのは、子どもの頃からそこに必ず喜びを感じるはずで、それを感じたらもっと喜ばれたいっていう価値観や気持ちがもっと成長していくものだと思うんだけど。

うん。

ふるかわ りさ

口では言うんだよ「人のために!」って。
感動するような喜びって、感動するくらいの思いがあってこそじゃん。
でも、教育現場でなかなか全部させるっていうことがなくって。

うーん。

ふるかわ りさ

最近講演でもよく言ってるし、保育園を作った時に園長の白水ともよく話をしたんだけど、

『何かを発案して、始めて、続けて、終わることができるか』

みたいな。この力ってすごく大事なんだけど、今の教育現場ってどこかを部分的に経験させることはあるんだけど、最初から最後までっていうのは、なかなかなくって。
あったとしても、全て事前にシナリオがあるの。それをなぞる。
大人が、この学年の子ならこのくらいできるだろうと計画を立てるの。
例えば、クッキングをやりましょうっていう時も、下準備から全部先生がやって、最後クッキーにチョコレートで顔描くとこだけさせるとか。ラッピングも片付けも先生が全部やってくれて、はいお母さんにお土産もっていってね、みたいなのがすごく多いのよね。

うんうん。

ふるかわ りさ

仕事体験とかでも、華やかなところだけちょこっと子どもにさせるの。格好だけいっちょまえの格好させて。でも、実際、自分がバイトとか入ったら全然違うじゃない。料理1つ作るにしても、卵焼き1個作るにしても。卵買ってきて、割って、混ぜて、焼いて、盛り付けて、食べてもらって、片づけて、までで「卵焼き作る」だと思うんだけど。ほんと、部分的にしか経験してないから、人に喜んでもらった時の喜びもちっちゃいじゃん。ちょこっとしかやってない、顔だけ描いたやつで喜んでもらった、それは嬉しいんだけど。
それじゃ「よっしゃー!」みたいな、心の底からの達成感みたいなのっていうのは感じられないし。

うんうん。

ふるかわ りさ

そういう経験が、なっかなか積めないんだよね。高校出るくらいまで。

うんうんうん。

ふるかわ りさ

でもさ、さっきのごはん選べないとか、今日自分が何したいか分からないっていうのと一緒でさ。考えたことない状態でずーっといたら、もう養殖の魚みたいなのになっちゃって。人を喜ばせたい、人に喜んでもらって嬉しいっていう気持ちも、全然センサーが働かなくなっちゃったりとかするなーって。

ほんまにそうやね。アンテナが立ってない。

ふるかわ りさ

そうそう。

全部させないっていうのは、どうせ無理でしょっていう大人の考えと、大人がちょっと疲れてて根気がないっていう部分と、両方あると思うんやね。

ふるかわ りさ

うん。

うち畑にお客さんの子どもを預かって連れていくねん。親は連れていけへんねん、邪魔やから。親がブレーキかけるから、子どもだけ預かって車に乗せて連れていくねん。それで、小学生低学年でも耕運機かけて、肥料撒いて、鶏糞撒いて、収穫して、大根剥いてとか。普通に仕事できて。そしたら、ほんまに大人と同じようにやるんやんか。

ふるかわ りさ

うん。

親が自分子どもがそこまでできると思ってないから。畑からLINEで動画を親御さんに送るんやけど、みんなびっくりして「そんなことまでやってるんですかー!すごいですねー!感激ですー!」って。それはもう自分の子どもを信用してないだけやから。普通にできますよって。子ども扱いするから、それを子ども達は感じて、子どもぽくていいんやなって思うだけで、子ども扱いせーへんかったら全然普通にやるねん。

ふるかわ りさ

そうそう!ほんとそう!
子ども扱いして天井決めんさえしなければ、ぐんぐん伸びるし、大人が思ってるほど、何もできなくないよね。

うん。

ふるかわ りさ

「どんな声掛けをしたら?」とか「どう導いたら?」とか「どう教えたら?」とかじゃないと思ってる。

人ってそういう風にできてるからね。大人が勝手にブレーキをかけて、危ないからとか、子どもだから、とか。自分ができへんことを子どもができると具合が悪いのかわからへんけど、自分のキャパの中で育てようとするやんか。

ふるかわ りさ

多くの学校の先生達って、自分のよく知っていること以外のことを、自分よりも生徒の方が知識量があるっていう状況をすごく嫌うのよ。
先生たるもの、全てを知っているべきで、「教える」のが仕事と思っているから、生徒が自分の知らないことを言った時に「何それ?知らない教えて!」を、なぜか言えないの。

んーー!!

ふるかわ りさ

全て自分の知っていることでコントロール出来るように授業中の50分を組み立てたほうが「楽」なんだけど、私たちは天井を設けずに、常に考え続けたい。

んーーー!!

役割は別に教えることじゃないのにね。育てることやから。

ふるかわ りさ

ね!そう!例えば、保育園とか親子関係の中で、子どもって勝手に育っていくし。親が教えたことだけで学んでいくわけじゃないじゃん。
外でも学んでくるから、私とこの子の触れてる世界って全然違う。家庭の中で接点があるだけで、彼女たちは彼女たちなりにいろんなことを吸収してくるし。
全部親が教えなきゃとか、全部親が管理しなきゃ把握してなきゃみたいに思うんだけど、そうじゃなくて。
教えるのが仕事じゃないってまさにその通りで、じゃあ何が仕事なのってなった時に、やっぱり、さっきの不信感じゃないけど、いつも私はあなたを応援しているよ、私は何があってもあなたを好きだよ、ここに帰ってきたらいつもここにいるよ、っていうそれだけで十分仕事だと思う。

うんうん。

ふるかわ りさ

それがあると思い切ったことも出来るじゃん。この人は必ず自分を信じてくれるとか。自分が失敗してもこの人なら何故それがしたかったのかをきっと聞いてくれるとか。泣いて帰ってきたらごはん食べさせてくれるだろう。みたいな人がいるから「えいやっ!」っていうことも出来るから。それになりさえすれば、つまり「帰ってくる場所として存在してれば」それで十分仕事として成立してると思う。

うん!

ふるかわ りさ

でもやっぱりね、教授法がとか、何とか論が、とかなるんだよね。
そうするとね、今日その子がどんな気持ちかよりも「その教授法のやり方を守ること」が一人歩きしてしまう。

よくお店をやってる人が相談しに来た時に、いつも同じ結論に、どんな人がどんな相談しに来ても、まーまー同じ結論になることが多くて。
みんな、「お客さんと向き合う」って言う。

ふるかわ りさ

うんうん。

お客さんと向き合うって一般的によく言われるけど、うまくいかないんですよーって人と話をしてると、お客さんと向き合ってっていう気持ちの人が多い。

ふるかわ りさ

同じ方向見るじゃなくて?

そうそう。お客さんと向き合ったらあかんのちゃうか?って。お客さんと向き合っても何も生まれへんし。私が、あなたが、ってことになるから。
お客さんに寄り添って「今夜のこれからの
2時間はどんな時間にしましょうか?」「この料理をどうしますか?お酒はどうしますか?音楽はどうしますか?一緒に考えましょうか?こんなんできますよ。どんなんしてほしいですか?」みたいな。
同じ方向を向くのがサービス業で大切な部分であって、お客さんと向き合ってても、プライドとか関係ない方向にいってしまうから。従業員と向き合うとか、向き合っていいことなんて絶対ないから。
あははは(笑)
向き合わん方がいいよって。

ふるかわ りさ

そうだね!だったら、自分と向き合うじゃないけど、自分が進みたい方向にとにかく自分が進む方がいいよね。そうするとついてくるというか、みんなそっちに進みたくなるからね。

そうそうそう。

ふるかわ りさ

私あっち行きたいんだー!って想いに、私も!私も!って人たちが集まってきて輪が広がるわけじゃん。

自分が走ってたら向き合おうとも思えへんし、時間もないし。

ふるかわ りさ

ほんとそれ。
ネコリパブリックのあさかが、以前わたしが落ち込んでる時にかけてくれた言葉にね「りさ、私たちは息吸って吐いてるだけで忙しいんだから!(他人の声であれこれ心を痛めるのやめましょう)」ってのがあって。
ほんとに、「あなたのために」って言う人のアドバイスって、有り難くはあるけど、「あなたも、あなたのために一生懸命生きてください。私は私のために生きますから」って。

あははは。

ふるかわ りさ

保育園を作る時にね、一瞬迷いが生じて前に進めなくなったことがあったの。
その時に、友達が「りさは、自己中心に動くことがそのまま利他になるステージにあるから、誰かのためとか言い訳して二番煎じを作るな」って言ってくれて。
そうか。自分のやりたいことをとことん突き詰めればいいのかと思って、霧が晴れたことがあった。

はははは!
ジャンゴではさ、こういうことを夜な夜な無料で話してるんです(笑)

ふるかわ りさ

深いよ!

それはもう、カウンター席はテーブルチャージ付けた方がいいよ!(笑)

うち親先生で、兄貴も先生やねん。先生一家やねん。

ふるかわ りさ

えーー!

なのにジャックさん何でこんなに落ちこぼれたの!?(笑)

いや!優秀やから、先生のキャパに収まりきれへんかってん!って。
優秀やから飲食やるねん!(笑)

ふるかわ りさ

(爆笑)

今日もいろいろ買い物したけど、ジャンゴは自分で畑やってるし、季節ごとにないものってあるやん。

ふるかわ りさ

あるね。
今はスーパー行ったら、大概のものは季節なんか関係なくいつでも手に入るけど。

お客さんが「こないだ食べたあれ、おいしかった〜。今日はないんですか?って言ってくれるけど、「ないんです〜。また夏来てくれたらあります〜」って。

料理も、手作りで仕込んでるから売り切れたら終わり。

ない時期があるから、ある時期があるやん。

ふるかわ りさ

そうだよね!

なんかな。句読点がないねん。
今の世の中には。

野菜も果物も、いつでもある。
ジャンゴはレコードかけてるけど、レコード選んで、出して、針を落として、曲が始まって、曲が流れて、曲が終わる。

次のレコードかけるまで音楽は鳴ってないけど、お客さんの喋る声とか、カトラリーの音とか、料理の音とか。

ラジオや有線でずっと音楽流しっぱなしとは違うねん。

ふるかわ りさ

うんうん。

句読点。大事やと思うな〜。

ふるかわ りさ

う〜ん。深いね〜。いいね〜。

ジャックさんのごはん食べたくなってきた。

今日も、おいしいもん作りまっせ〜!

ふるかわ りさ

わ〜い!

編集こぼれ話

ふるかわ りさ
前日の夜、ほぼ寝ずに準備して、朝一番の飛行機で鹿児島入りして、夜中までずっと働いていたのに、翌日の私の誕生日のために深夜、事前に全国の友達から集めていてくれたお祝いの動画を編集してくれて、粋なサプライズを仕掛けてくれたジャックさん。
やられた〜。
この人には敵わない。
こんなかっこいい友達がいるから、私ももっともっと頑張れる。
ジャックさん、いつもありがとう。