読みもの
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「話し合い」を可能にするもの(ひみつの計画③)

保育園の中の話

「大切にしているのは、子どもたちの声を聴くこと」とは、

保育チームを率いる山本珠緒先生。

初任の園で療育を必要とする子どもと出会い、

悩み学びながら行ってきた保育で得たものは、

あらゆる子どもにとって、その言葉や行動の背景にまで寄り添う大切さでした。

「〇〇式教育」などという型には収まり切れない、ひよりの流の豊かな保育の源は、ここにありそうです。

 

ひより保育園に潜入してまず驚いたのは、幼児が立派に、プロジェクトの「話し合い」をしていること。

それはまるで、大人が「ミーティングです~」と呼びかけられて集まるように、自然です。

様子を観察していて、だから「話し合い」が成り立つのね、と思えるPOINTを発見しましたよ!

それは、「書く」こと。

ひよりには、「書く」ための3つの素敵なアイテムがあるのです。

 

ひとつめは、名物(?)ヘルプミーカード

「上手に人に助けを求められることが本当の自立だと思う」とする代表のりさ先生の発案で始まりました。

いわば江戸時代の目安箱のようなものですが、園児はもちろん、卒園児や保護者からの嬉しいカードが届くこともあるのだとか。

話し合いの出発点となる「〇〇したい」「○○してほしい」を、書いて伝えるトレーニングが、日々の保育の中にあるのです。

開園して最初に届いたヘルプミーカードは、「はさみをかってください」だったそう。

文字が書けない子はどうすればいいの?という心配は不要です。その子がやっとのおもいで書いた〇印に、先生が翻訳を付けているかわいらしいヘルプミーカードも見つけました。

そこにあるのは、言葉や文字で思いを伝える、目ざめのようなものかもしれません。

ふたつ目は、オリジナル記録ノート

教室の壁のラックには、「ひみつの計画」という表題と個人名が記された記録ノートが並べられていて、話し合いとなると、5歳児さんはそれを手に一斉に机を囲みます。

「カッコいい~!!」異年齢が活動する縦割り保育の教室の中で、4歳児や3歳児さんは、そう思っているに違いありません。

話し合いで決めたことや思いを記録していく子どもたち。

無理に字を教えなくても、お友達が書くのを真似したり、誰かにお手紙をプレゼントしようとしたり。先生方がそんなタイミングを逃さず手を差し伸べることで、子どもたちはいつの間にか、文字を覚え、話し合いの内容を記録することもできるようになっているようです。

3つめは、先生方が書く保育デザインマップの存在です。

珠緒先生の保育デザインマップを見せていただきました。子どもたちの意見、子どもにこう育ってほしいという思い、チームを組む先生方にお願いしたい進め方・・・・。そんなことをテーマごとに書いているのです。

この手法は全ての先生、そして研修会でも使っているそう。

「報告書のように書くだけでは、見返すこともなかなかありませんが、考えの道筋を残すことで、振り返りがしやすい。先生方の勤務はシフト制のため、なかなか会えないこともありますが、これを見れば、他の先生の考えの広げ方を知ることができて便利です」と珠緒先生。

子どもたちだけで「話し合い」ができているわけではありません。先生方が子どもの声に耳をすまし、それを「保育デザインマップ」などを使って深め、共有する保育が、子どもたちの「話し合い」を支えています。

 

 

編集こぼれ話

前田真理
先日、1990年から実施されてきた大学入試センター試験が終わりを告げました。これからの時代は、知識に加えて、考える力や協働する力がより必要だとする入試改革に伴うもの。
人は「書く」ことで、「考える力」を獲得すると言われます。自分たちで考えて行動する力を着々と蓄えつつあるひよりの子どもたち。そのひとつの要因は、「書く」に親しむ日々なのではないかな、と感じさせられました。