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機が熟すのを待つ~先生は歌手?

保育園の中の話

こびとがひより保育園を探検していると、さささ~とトイレへ走る人影が。

それは、乱れたトイレのスリッパを並べる姿。「気になって仕方がないんですよ」と苦笑するみんと組のひとりの先生です。

トイレのスリッパ問題は、小中学校でもよく話題になるところです。それだけ難しい。

外遊びに行く前や食事の前など、みんなが一斉に用を足すことがある保育園では、沢山の子どもたちが入り乱れてわちゃわちゃで、とてもスリッパを並べる余裕などないのが現実です。

「保育園は幼稚園より時間が長いこともあるでしょうが、ひより保育園では特に、子どもたちがリラックスして、我が家っぽく過ごしているなと感じています。職員も上意下達ではなく、できる人がやる、困っていたら手を貸すという雰囲気」とあって、先生方それぞれの工夫や協力が緩やかに行われている様子です。

そこで、先生が秘かに着手したのは、プチ・トイレ革命(こびとが勝手に命名)。トイレのスリッパが揃えられないのは、出る子、入る子、手を洗う子が入口付近で入り乱れ、スリッパを揃えづらいのが原因では?と考えた先生は、マスキングテープを持ち出して、トイレ入口近くの通路に“中央線”を引いてみました。

このおかげで、混雑はやや解消。とはいえ、まだスリッパはきれいには並びません。相変わらず先生は、気が付くとさささ~と走ってスリッパを並べたり、並べようねと口で伝えたり。

そして、ある瞬間がやって来ました。子どもたちみんなが腰かけておやつを食べ終えたころ、いきなりオンステージが始まったのです!

♪トイレには~それはきれいな女神さまがいるんやで~♪

トイレの神様を歌い始めた先生。「スリッパを並べて欲しい」という思いを込めての熱唱でした。もちろん、「スリッパ並べてくれたら、きっと女神さまが喜ぶよ~」という言葉も忘れずに。

熱唱は、機が熟すのを待ったものでした。「子どもたちとの信頼関係が結べて、今なら伝わるかなと思った」タイミング。

その思いが伝わったのか、「先生、並べてきたよ」と報告してくれる子どもが現れました。「並べるとどう?」と聞くと、「スッキリするよ」と答える子がいたり。それに対して、「わ~女神さまが喜んでるね」と大げさなくらい感謝を伝える先生でした。

こうして結果が見られたプチ・トイレ革命。オンステージから時間が経過するにつれ、並べられる数は減ってはいるけれど、いいのです。ローマは一日にして成らず。

編集こぼれ話

前田真理
「トイレにマジックをかけた先生がいるんですよ」と教えてくれたのは他の先生。熱唱直後の子どもたちの変化にびっくりしたそう。機を見た先生の勝利でもあるのでしょうね。しかし、こびとは、今日も、さささ~とトイレに走る先生の後ろ姿を見ちゃいました。子どもたちもこの後ろ姿に気づいているかな?
♪負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じぬくこと、ダメになりそうなとき、それが一番大事~♪