
環境学博士に聞く地球温暖化の話 Vol.3 〜前編〜

前回のインタビューから、なんと1年も経過してしまった、元南極観測隊の大岩根ひさしさんとの対談。
今回は温室効果ガスについて詳しく教えていただきました。

ひさしさん、お久しぶりです!
前回のインタビューから、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

お久しぶりです~!
年を越しちゃいましたね。
ほんと、、ほぼ一年!

なんと、その間におめでたいお話が!

そうなんです!

大岩根家の未来!
硫黄島の希望!

すでに懐かしい…!笑

きゃーーーー^^

昨年5月末に長男がうまれまして!

パパ!
おめでとうございます

元気に成長しとります!

わーーーーーーーい!
ますますよい未来への思いが深まりますね。

そうですね、きれいな海や山がのこるように。
ああ…いま隣にいますが、実物も、写真もかわいい…

笑。
ひさしさん、相当子煩悩なんだそうですね。

そうですね…
子供がここまでかわいいものだとは思いませんでしたね。

ステキ。

元々 獣医になりたかったくらい、小さい生き物は人一倍かわいがるほうでしたが、もう 圧倒的に子どもの方がかわいい。
うるさい泣き声すらかわいい。

ほぉ。

うんこもかわいい。

すばらしいwww
愛ですね。

言いすぎました。やっぱうんこは臭いです。
最近母乳みるく以外たべるようになったので。

あーw

もうそれは臭くて。

一丁前に立派なのしますもんねw

そうなんです。
子供扱いがいやなのか、離乳食たべなくて、僕らの食べ物を奪うんです。
水分たりないのか最近便秘気味で…
すみませんうんこの話ばかりで。

うんこ研究家としては このままウンコの話続けたい気もしますけどw

笑。そうですね。
で、うんこですが、、、

コホン。

笑
そうそう。我が子ができたことでの心境の変化でしたね。
えーと、やっぱり子どももきれいな海に潜ってほしいと思うようになりました。
サンゴの白化とか気になり始めた。
子にも孫にもおいしいご飯も食べてもらいたいし。今(1月7日)も、どか雪降ってますしね…
寒暖差、とか降水のパターンが激しくなってきてますよね。これがますます進むと、もっと暮らしにくくなってしまう。

以前インタビューで、近い将来お寿司が食べられなくなる(魚が獲れなくなる)という話出てきましたけど、地球の「今」ってどんな状況なんですか?

はい。

前回のインタビューで、ここまでは習いましたね。

はい、めちゃCO2増えてる、というのは前回お伝えした通りで。今年めっちゃ暑かったり、強い台風がきたり、どか雪がきたりと、最近の異常気象も温暖化の影響なんだろうなと、僕は思っています。正しくはちゃんと研究しなきゃなんでしょうけど。

去年の台風 すごかったですもんね。
本当に怖かった。

ほんとに、、。
うちの島(硫黄島)は初めての全島避難がかかって大変でした。被害はそれほど出なかったのは幸いですが。

そうでしたね~
出産前だったっけ。

いえ、出産後でした。

プラス、コロナウイルスですね。
赤ちゃん連れでは本当に大変でしたね。

ほんとに。
コロナのこともあり、なかなか大変な一年でしたね。

はい。

前回の最後の質問にもどりますと、
「なぜ大気中のCO2が増えるとよくないのか、また、CO2の量だけ気にしていたらいいのか。」

はい。

CO2だけみてたらいいわけではないんです、実は。温室効果ガス、って聞いたことあります?よね?

はい。
温室効果ガスといえばCO2とかメタンとかって感じで、名前を知ってる程度ですが、、。

CO2とメタン以外にも、地球を温暖化させる気体があるんです。

、、、ぉぉ。


ぉぉ、、、。

もう少し詳しく見るならこれですね。

むむむ?
難しい香り。

ですね…すげー雑にいうと、
温暖化を進めるものと、逆に涼しくしてくれるものとがあるんですけど、どれがどのくらい効いてるか、が示されてます。

おお、、、。

右側に長いほど温暖化を助長している。

(みてる)

左側に長いほど涼しくしてくれる。

!!!
「プラマイ めっちゃプラス」な感じですか?

ですね。
で、黒丸と横棒みたいなのあるのわかります?それぞれのグラフに。

ありますね。

本当に完全に正確にはわからないんだけど、その範囲の中に入ってるだろうというのが横棒の範囲です。

おー。

二酸化炭素がいちばん温暖化への影響が大きくて、二番目にメタンで、と言う感じ。
メタンは牛のゲップとか、畑で野菜が腐ったりとか、ゴミが腐ったりで発生するみたいです。

最近、食と環境についていろいろ調べている中で、稲作でもメタンが発生すると知って びっくりしました。

そうみたいですね。
永久凍土が溶けて湖ができて、そこから発生してるって話もあります。

何それ、恐ろしい、、、、。

この記事ですね。
これもメタンがらみらしいです。

すごく怖い、、、、。
はい!
質問があります。

どうぞ。

これ。
わたしの拙い知識ですが、、、。
メタンってCO2の何倍も温室効果が高いんですよね?
このグラフのパーセンテージはそれぞれのガス自体の量ですか?

違うと思います、CO2換算って書いてあるので、単純に量を比べてるのではないと思います。

おーーー!
見落としてました。
理解しました!ありがとうございます。

メタンはたしかCO2の20倍くらいの温室効果なので換算するときには20倍の量として計算してるのではと思います。たぶん。

ほぅ。

あ、ここに詳しい数値がでてますね。
100年GWPってのが、それぞれのガスを100年間でみたときに二酸化炭素に比べてどのくらい仕事してるか、という数字です。
大気にどのくらい残りやすいかのスタミナと、どのくらい赤外線をキャッチして地球に投げ返すのが上手いか、の掛け算って感じ。上手い選手がスタミナもあると、敵としては厄介ですよね。
それがメタンは二酸化炭素の28倍だということですね。

なるほど。

あとのフロン類(CFC-11, CFC-12, HCFC-22)ってのは、冷蔵庫とかクーラーの冷媒として使われてるガスらしくて。

冷蔵庫とかエアコンとか?
なんか私たちが子どもの頃聞いた覚えがある。

ですね。

吸うと声変わるの何でしたっけ?

あ、それヘリウム。笑

ヘリウムか
※ヘリウムに温室効果はありません

フロンガスがオゾン層破壊するって話あったじゃないですかー?

あった〜!
あれはどうなったの?

フロンガスは禁止されて使われなくなったんです。

なんか、オゾン層に穴あいてるとか聞いて、恐ろしかった覚えがあります。

そうそう。ぼく小学生だったんですが、オゾンホールって穴から酸素が抜けてって窒息する!!って怖くなった覚えがあります。

わたしも!
でも、いつのまにか意識の外に追いやられてました。

イケメンに恋してとかですか?

遠い目、、、
ぉぃw
なんか、小学生とか中学生のころは、オゾン層と、ノストラダムスの予言が怖かった記憶があります。

なつかしー!何もなかったですねえ。笑
ちなみに、オゾン層は様々な規制の効果により、回復し始めているそうです。

おお、よかった。
でもさ、科学的根拠の全くないノストラダムスは、日本中がそれなりに信じて怖がっていたのに、気候危機に関しては これだけ科学者が声をあげているのにいつまでも他人事って、人間っておかしなものですね。

確かに、、、。
で、フロンガスの話。
フロンが禁止されたので代わりに代替フロンってやつが使われるようになったのですが、こいつがまたCO2の10,000倍くらいの温室効果ガスらしくて!
(上の表ではCFC-12が10200倍ですね)

!!!
だめじゃないですか!

冷蔵庫とかクーラーとか古くなって漏れたり、ちゃんと回収されずに放置してあると、それが漏れ出て、地球をあっためてしまうらしいんです。
※詳しくは、ひさしさんも翻訳協力をなさった 書籍『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』をお読みください。

おおお。

だから、CO2だけじゃなくてメタンとかフロンとか、そういうやつらも温室効果ガスとして気にする必要があります。

冷蔵庫とかクーラーのガスなら、地球を冷やしそうなのに (素人)。

なるほど(笑)!
ガスで直接冷やすのではなく、電気を使ってガスを圧縮したり膨張させたりして熱を奪って冷やすので、ガス自体がそれだけで冷たくしてくれるわけじゃないみたいですよ。

とにかく、地球をあっためるんですね。
「代替フロン」。


おーーーーーー!
おーーーーーーーーーーーー!
目から鱗!
「温室効果」!
おーーーーー!
だから”温室”効果って言うのか!! ビニールハウス的な!
ヘレンケラーになった気分!

なぜ、ヘレンケラー?

ゥオ、ゥオ、WATTER!!!!!!!
みたいな?

そういうことかw
逃げてこうとする熱を捕まえて地球に投げ返すよな感じですね。
メタンはそれが上手。代替フロンに至ってはめちゃくちゃ上手い。
CO2が1なのに対して、メタンが28で、代替フロンに至っては10200だから、ヤムチャと魔人ブウくらい違います。

う、うん。
ドラゴンボール、雰囲気でなんとなくわかります。笑
フロンやばい。
温室効果ガスがあるから地球があったかくて、それがちょうどいい量だとちょうどいい感じであったかい。
しかし、、、ということですね?

そう。
恐竜のいた白亜紀なんかは、火山活動がめっちゃ活発で、二酸化炭素がめっちゃいたんです。上手いやつは別にいないけど、とにかく選手が多かった。
だから地球全体があったかくて、地球上に南極とか北極にも氷が全然なかったみたい。

!!!
ほーーーー!

凍ってるぶん全部とけて水になってるから海水も多かったらしいですよ。

へ〜。

ながーーーーーい地球の歴史を見ると、地球のしくみがそんな感じになってて暖かかったり、逆に二酸化炭素選手が少なくて寒かったりってのが起こってきたんです。
で、僕たちは化石燃料を使いまくって、何ならメタンとか代替フロンとかまで持ち出してきて、地球史的には超短期で温室にしまくってるわけですね。
んで、ここ1万年くらいはせっかく暖かめで安定してたのに、その安定感が崩れつつあるのが最近の豪雨とか寒波とか台風とかの異常気象として見えてきている。そんな感じだと思います。

涙。

「これ以上行かないでほしいな。君は行きたいのかもしれないけれど」
村上春樹風に言うとそんな気持ちです。

う、、、うん、、ですね。(村上春樹読んだことない)

笑

そう言えば 先日、『人新世の資本論』という本を読み、「ポイント オブ ノー リターン」という言葉を知りました。

これですね?

え、、、?(芸能情報疎い)

あ、ちがいますね。

曲名しらなかったw
うまくボケられずすいませんw
ポイントオブノーリターン。
とにかくこのままいくと自然が元の状態を取り戻せないところまで来ているといった内容の記事でした。

あー、ここに書いてありますね。
「仮に、産業革命前から2°C以上の温暖化がおこると、その影響は社会にとって受け入れられないほど大きくなるとします。そこで、温暖化を2°C以下に抑えるために対策をとるわけですが、対策が遅れてたとえば1.5°Cを超えてしまったら、地球の熱慣性によって温暖化はすぐには止まれないため、そこから急いで対策をとっても2°Cを超えることが避けられない、という場合、1.5°Cの点を “point of no return” とよぶことができるでしょう。」(本文より)
スピード出ちゃってたら、信号が変わるのに気づいてブレーキ踏んでも停止線を超えてしまう、みたいな話ですね。

うんうん。

江守さんの記事は2010年でしたね。
2021年の今、ひょっとすると、もうポイントオブノーリターンは過ぎてるのかもしれないです…。
パリ協定って聞いたことあります?
トランプが言ってアメリカはパリ協定脱退したとか、バイデンさんが大統領になって初日にパリ協定に戻ることに署名した、とかいうやつ。

はい、みんなで温暖化しないように頑張ろうって、決めたやつですよね?(雑)
※2015年に成立したパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して、2度より充分低く抑え、1.5度に抑える努力を追求することになっています。

そうです。
1.5℃と2.0℃だと全然違うから(たとえば2.0℃になるとサンゴは全滅するとか)1.5℃に抑えようってことが言われてるんですが、もう1℃くらいは上がっちゃった、というのが現状です。

おお…

しかもこの数年で、0.87℃→1.1℃と、着実にその数字が上がってきてます。数値はいろいろありますが、新しい報告見るたびに着実に上がっています。
このままだと2030-2052年には1.5℃に達してしまうと。
日本語だと、これに詳しく書いてあります。

むむむ。
よくないペース。

そうなんです。着実に排出してます、私たちは。
いまブレーキをかけたとしても、1.5℃を超えずに止まれるかどうか…
ポイントオブノーリターン、すぎているかもしれません。

うううっ。焦。
子どもたちに申し訳ない。

ところで、ホットハウスアースという言葉を聞いたことありますか?

ないです。

ホットハウスアース、というのはたしか2018年くらいに出てきた言葉で、

うんうん。

ポイントオブノーリターンの向こうにある世界って感じです。
変化の歯止めがかからなくてそのまま行っちゃうと、灼熱の地球になってしまう。
例えばめっちゃ海氷がとけて太陽光を反射しにくくなったり、永久凍土が融けてメタンがめっちゃ出たり、生態系が変わってCO2が吸収されなくなったり、ツンドラの木々が枯れたり、みたいに、変わり始めた気候の仕組みがさらに変わってドミノ倒し的にどんどん温室効果を進める方向に行ってしまう。ブレーキが効かなくなってしまってめっちゃ暑くなるのがホットハウスアース、という感じだと思います。

怖い。

んで、そのホットハウスへのスイッチが、どうも 2.0 ℃くらいのところにあるらしい。
1.5 ℃ならまだ引き返せるかもしれない。
2.0 ℃までいくと、たぶんそのままドミノがいっちゃって 2100 年に 4-5 ℃の温暖化になってしまう。とめられなくなっちゃう。だからその差は 0.5 ℃ 暑いか涼しいか、だけの話じゃないんです。
詳しく読みたい方はこちら。

、、、。

最近、50年に一度の雨が毎年降ったり、やたら強い台風がきたりするようになりましたよね。みなさんも肌で感じてるんじゃないでしょうか。

ええ、ほんとに。

ここには、『2019年、異常気象は「新たな常態(the new normal)」になった』ということが書いてます。これは気候の仕組みが変わりはじめたぞ、ってことです。

おおお、、、、、。(絶句)

正確には研究成果を待たなくてはいけないですが、ホットハウスへのポイントオブノーリターンを超えてないといいですね…できるだけはやく引き下げたい。

引き返さなきゃいけないとわかってるなら早い方がいいですもんね。
どう考えても。

歌の歌詞みたいw
歌作るか。
デビューシングル「ホットハウスアース」。

ひさしアンドりさ
ナウオンセール。

ユニット名ださ…ww

カップリングは、松田聖子の瑠璃色のちきゅ、、、
え?

歌もういいw

笑。
すいません、つい、、。
で、話を戻すと。
CO2はまだ増え続けてるんですか?
だって最近、以前よりCO2削減の話聞くようになってきたように感じます。

確かにそうですが、、、たぶんまだまだ増えてますよね…


そう。
加えて、インド中国なんかはまだまだ発展途上で、今後さらに農村部にまで家電やガスコンロや車やエアコンや冷蔵庫が行き渡るようになるところなので…まだまだ増える。

、、、。

先進国も、これだけ猛暑寒波があればクーラー暖房多用することになるし、一見すると先進国の温室効果ガスがここ数年減ってきているように見えても、企業の生産拠点が途上国に移っててそっちで出してるから全体で見ると意味がないってのもあったりする。

そうですね。
私たちの食べ物や身の回りのもののほとんどは海外で生産されているということはそういうことですよね。
私たちの生活自体を見直す必要がありますね。
どんなエネルギーなら大丈夫なのかとか、どの国が一番出しているかという議論ではなくて、もっと抜本的な暮らしの見直しが必要。

そうなんです。
日本を含む上位5カ国で6割くらいの温室効果ガス出してるんで、 日本人は「自分がやっても意味ない」とかでは全然ない。下手すると途上国の10人分とかを僕たちは日常で使ってるわけですから。

あれですね。なんか全然痩せずに太り続けてる人が
「先生 運動苦手なんですが、何を食べたら痩せますか?」的な。
あなた本当に痩せたいなら、そういうこと考えてる間に、食べる量減らして運動しなさい!みたいな

それ!

こっちのポテチより、こっちのポテチのほうがカロリー低いとか言ってたら永遠に痩せないですね。

生活そのものをけっこー変えなきゃいけない、というのが本当のところでだと思います。

よく分かりました。
我が家も、今年は去年までと暮らし方をだいぶ変えました。その話はまたいつか、、。

おお、ぜひぜひ!
エコロジカル・フットプリントという考え方があるんですが、

せ、先生!
もう、頭のキャパが、、、。

笑
では、今日はこの辺で。
続きは次回にしましょうか?

はい!
よろしくお願いします。

了解です!
では、また〜!

今日からさらに、できることに取り組んでいこうと思います。
ありがとうございました!
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ひさしさんとのインタビューシリーズ
・序章:ひさしさんってどんな人?
・Vol.1:本当に温暖化って起こっているの?
・Vol.2・前編:気候変動だけじゃない!ひさしさんが保護したウミガメの話
・Vol.2・後編:気候変動に関するデータは科学者たちの涙ぐましい努力の結晶
・Vol.3・前編:もう引き返せないかもしれない?ポイントオブノーリターン (このページ)
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編集こぼれ話

いよいよ、私たちは暮らしを根本的に見直さねばならない時期にきているようです。
行動しましょう。