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ひみつの計画、最大の危機と嬉々! (ひみつの計画⑦)

保育園の中の話

2回のみかれゆきかレストランの大成功から2週間。子どもたちはどうしてるでしょう。世の中は、コロナ一色で大騒ぎの毎日ですね。

時間は少し遡ります。子どもたちと振り返りの時間を持った珠緒先生。「おいしいと言われて嬉しかった」と喜ぶ子どもたちに、グッと踏み込んだ質問を投げかけました。「どうして嬉しかったんだろう?」と。

すると子どもたちは、「ニコっと笑いながら言ってくれたから嬉しかった」「心が温まるからうれしかった」などと、それはまるで小さな哲学者のよう。

遠足の資金稼ぎのひとつの手段として企画した「みかれゆきかレストラン」でしたが、子どもたちは、レストランを通した心の通い合いまで、しっかりと受取ったんですね!だから、最後のレストランでは、あんな笑顔でお客様をお出迎え。「『いらっしゃいませ』や『ありがとうございました』はちゃんと言おうね」と確認し合っていたのです。

そして「みかれゆきかレストラン」には、新たなミッションが追加されました。自分たちの「ありがとう」の気持ちを伝える手段として、魚屋さんやお肉屋さん、八百屋さんなど、これまでお世話になった人たちをご招待するレストランを開く計画も浮上したのです。

そして実は、「子どもたちの頑張りを見て私たちも・・・」と、お母さん方の間でも、ひみつの計画が。こんな秘密会議も!あ~〇〇〇〇〇きっとビックリして喜ぶな~。

しかし、しかし、そんな嬉しい状況は、コロナ騒ぎで一転です。

そもそものひみつの計画が大大ピンチ~~!水族館への遠足は危険な状況です。先生が、「どうしよう?」と子どもたちの話を持ち掛けると、返ってきた答えは、「やっぱり、魚釣りに行きた~い」でした。そうでした。ひみつの計画の発端は5歳児さんの「魚釣りに行きたい」という願いからスタートしたのでした。難しさから水族館遠足に変更していましたが、なんと、コロナ騒ぎで戻ってくるなんて!これは、もう、やるっきゃないでしょう。

そこで、5歳児さんがはじめたのは何でしょう?それは、釣竿つくり~~!

5歳児さんは、お泊り保育の際、キツネとオオカミの友情を描く絵本『ありがとう ともだち』を読んでもらったことがありました。キツネがオオカミの家に初めてお泊りした嬉しい日に、ふたりで海釣りに出かけるお話です。それを思い出した子どもたちが作ったのは、細い竹に、釣り糸と釣り針と浮きを取り付けた、絵本そっくりの釣竿。そして、まだ必要なものがある~と餌にするミミズ獲りまで始めちゃいましたよ。見つからなかったけど(笑)。

やってきたのは重富海岸です。ここなら、3歳児さんが海に落ちちゃうかもって心配もなさそうですね。子どもたちに味方して、空は快晴、お日様がポカポカとした陽ざしを送っています。

早速海辺へ走り出し、小さい子たちは貝を拾ったり石を投げたり。まだ水は冷たいのに、裸足になっている子も。そして5歳児さんたちは釣りを始めましたよ~。絵本に出てきたように「カジキを釣るんだ」と張り切っている子もいます。

なんとか釣り糸を垂れるも、「魚いないね~」「糸が絡まっちゃった~」と、なかなか思うようにはいきませんが、かんしゃくを起こすでもなく、中には、4歳児さんに釣竿を使わせてあげる子がいたり。穏やかな時間を過ごし、待ちに待ったお弁当をおいしそうに、嬉しそうに頬張る子どもたち。次は、公園で遊ぶんだ~と、駆けていきましたよ。

そうそう、魚は一匹もつれませんでした。改めて思うのは、成功することではなく、やりたいにトライする過程に、子どもたちは大きな満足感を得ているのだなぁということ。実は、『ありがとう ともだち』でも狙った魚は釣れません。キツネを喜ばせようと張り切ったオオカミはしょんぼりしているのですが、キツネは言うのです。「ぼくたち うみづりに きたでしょ それで まるごとの うみがつれたじゃない かいがらを ひろった すなはまも カニを つかまえた いわばも ある まるごとの うみだよ」と。

子どもたちの、やりたい!からスタートしたひみつの計画。様々な壁に当たって、努力し、修正を加えながら、とうとう、「3歳児さん、4歳児さんと一緒に魚釣りにいく」という願いを遂げましたね。そんなみんなと先生に、心からの拍手を送りたいっ。こびとの拍手、聞こえるかな?

編集こぼれ話

前田真理
海に投げる水切り石のように、投げた石はポポポ~ンと跳ねて、素敵な連鎖が続きます。
「やりたい」ことの育て方を教えてくれたひみつの計画でした。
そうそう、海で子どもたちが拾っているのは、きれいな貝殻だけじゃなく、流れ着いたゴムやトタンだったりして、へ~っと感心したり。
子どもの、そして自分のちっちゃなつぶやきに耳をこらして、明るい未来を考えてみよう。コロナ騒ぎを忘れさせる静かな海は、こびとにもたくさんのものを釣り上げさせてくれました。