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サプライズは終わらない(ひみつの計画⑧)

保育園の中の話

いよいよ、「みかれゆきかゆ」の卒園式がやってきました。

365日欠かさず営まれるひより保育園の毎日ですが、今日ばかりは、いつもの保育室に飾りが施され、おしゃれな装いに身を包んだ「みかれゆきかゆ」の7人も心なしか落ち着かない様子です。

時計が16時を告げ、小さな卒園式が始まりました。7人の卒業証書を読み上げ、それぞれの子どもへの贈る言葉を語る純平園長。先生の眼を真剣に見つめる子、視線を外しながらも耳をじっと傾ける子、時折目を抑えてうなづきながら向き合う子・・・。そして、贈る言葉の最後は全て、「これからも、いつまでも、親友でいましょう」と〆られていました。あ~なんて温かく、心強い言葉なのでしょう。

子どもたちの夢、たくさんの優しいお祝いの言葉、そして子どもたちから親へのお礼の手紙が披露されて卒園式が無事終了。

そのとき、事件は起こりました!

卒園児の1人がマイクを持ち、告げたのです。「これが最後のひみつの計画です!これから、〇〇先生と〇〇先生の卒園式を始めたいと思います」と。

 

自分たちのやりたいことの実現のためにひみつの計画を立て、お金を稼いでやり遂げた子どもたち。その資金の残りで保育園を去るふたりの先生へ花を贈り、卒園させてあげようと、担任の珠緒先生と共に、「ゼッタイに誰にも漏らしてはいけない秘密」として計画していたのでした。

名前を呼ばれた先生方が咄嗟のことに戸惑いキョトンとしていると、「ちゃんと返事をして前に出てください」と、子どもからダメ出しが(笑)。

先生はどうして辞めちゃうのだろう?という子どもたちの素朴な疑問に答えてもらうべく、“質問コーナー”が始まり、タジタジとしつつも涙を浮かべて答える先生たちなのでした。

それに続く茶話会は、保護者や全ての先生方も思いの丈を語る時間に。子どもたちからお世話になった先生方へのお礼の手紙も手渡されました。

そのときです。今度は珠緒先生の声が響きました!「大変です!みんな卒業証書持ってる?卒業証書が盗まれました!」と。

お化けからのメッセージに見入る子どもたち。これを読んでくださっているみなさんは、もうご存知ですね。ひより保育園には、だれもがお願いを書ける「ヘルプミーカード」の制度があるのです。卒園する子どもたちは、「お泊り保育でのお化け屋敷がとっても楽しかったので、最後にもう一度やりたい」というヘルプミーカードを出していたのです。

それに応えるべく、実は卒園式が行われている隣りの保育室で、先生たちは入れ代わり立ち代わり、こんな準備を重ねていたのです。まさに親友として全力で向き合ってくれるその姿が素敵!

さて、いよいよひとりづつ、懐中電灯を持ってお化け屋敷に挑戦です。やりたいって言ったはずなのに、「ギャーやだ~入りたくない~」とギャン泣きする子が出てきたり(笑)、笑い声と阿鼻叫喚の中、なんとか卒園証書を取り戻した子どもたち。きっと忘れられない思い出となる卒園式は幕を閉じたのでした。

ご卒園、本当におめでとうございます!

編集こぼれ話

前田真理
サプライズの連続だった卒園式でした。まず驚いたのは、卒園児たちの席がステージ上にあったこと。卒園証書を手渡す純平園長は、保育室の入り口に用意した低い位置にいて、子どもたちへひとりづつ卒業証書を手渡し。その後に続くサプライズやコメントにも、それぞれの子どもたちを尊重する大人たちの愛がいっぱいで感動的でした。人が生きていくうえで最も大切な尊厳の種を、子どもたちは無意識に受け取っているのだろうなぁと思わせられる温かい卒園式。「みかれゆきかゆ」はもちろん、保護者のみなさんや先生方へも、心からのおめでとうをお贈りしたいです!